ビジネスお役立ち情報:経営者のためのIT導入講座「VoIP編 第3回 奮戦!VoIP導入 IP網での通信でセキュリティを確保する方法」 ─ 大塚商会 テクニカルサポート QQ-Web
A社の総務部長はVoIPのメリットなどに関してBさんから説明を受け、その導入に対して乗り気になりました。しかし部長は、そこでふと疑問を抱いたのです。インターネットと同じIP網を利用するということは、セキュリティ面での不安があるのではないだろうか。もしも途中で盗聴される可能性があるなら、社外秘の技術的な内容や取引先との商談などの通話には利用できないかもしれない――そう考えた部長は、それらの点をBさんに訊ねてみました。
VPNで盗聴を防ぎセキュリティを確保
部長「VoIPの利用に際して注意が必要になるのは、音声の品質が保証されない点と、電話番号のケタ数が長い点のふたつだということだったよな。でも注意しなければならない点が、もうひとつあるんじゃないのかい。だってVoIPというのはインターネットと同じ、IP網を利用して音声を伝達するわけだろう。だとしたら電子メールが第三者に盗み見られてしまう可能性があるのと同じように、VoIPによる通話も盗聴される心配があるんじゃないのか。電子メールなら部外者に見られると困る場合は暗号化するなどの手が使えるが、リアルタイムで行われる通話の音声は暗号化が困難だろうし」
Bさん「あ、それは大丈夫でしょう。VoIPを利用する場合は、VPNを併用するのが普通ですので」
部長「いったい何なんだい、そのVPNというのは」
Bさん「Virtual Private Networkの略ですよ。仮想専用網だとか、あるいは仮想プライベート接続などと訳されることが多いようですね。これを利用するとインターネット上に、いわば仮想の専用線を敷設することができるのです。このVPNを利用して行われる通話や通信は、第三者に盗聴される心配がありません」
部長「インターネットを経由するのに、どうして盗聴される可能性をなくせるんだい」
誰かelsesに入るには、ワイヤレス接続を確保する方法2
Bさん「あまり技術的なことは僕にも、よくわかりません。そのあたりに関しては、開発部のCさんが詳しいはずですよ。そういえばCさんは今日、こちらの東京本社へ出張してきていましたっけ。彼の時間がとれるようなら、そのあたりを聞いてみましょうか」
本社と支社間でVPNを利用するのは簡単
Bさんは営業部の部屋にいたCさんを見つけ、総務部長の席まで一緒に来てもらいました。
Cさん「VPNについて知りたい、ということでしたね。VPNというのは本来ならば誰もが参加できるインターネット網の中に、いわばトンネルを作ってしまうようなものだといえるでしょう。特定の相手との通信を、第三者に見られてしまうことのないようトンネルで覆うわけです」
部長「いったいどういう方法で、それを実現するのかな」
Cさん「その技術的な方法はいろいろあるので、一言では説明できません。たとえば特定の相手とだけ、インターネットで普通に使われているのとは別の通信手法を用いる手などがあります。そうするとどんな通信手法を用いているのか解明しないかぎり、その内容を第三者には解読できなくなりますからね」
部長「技術的な難しい話はわからないが、とにかく盗聴の心配はなくなるわけだね。そのVPNというのは、簡単に利用できるものなのかい」
Cさん「部長がお訊ねなのは、VoIPでVPNを利用する場合ですよね。最近のVoIPゲートウェイは、ほぼ間違いなくVPNに対応しているはずですよ」
部長「VoIPによる音声通信と普通のデータ通信とを、分けて考えた方がいいのかな」
名前解決のプロセスは何ですか?
Cさん「データ通信でVPNを利用する方法も、決して難しくはありません。わが社の場合、東京本社と北海道支社の両方ともサーバのOSにはWindows 2000を利用していましたっけ。Windows 2000やWindows XPを利用しているサーバ同士の間であれば、追加の装置などは不要です。ソフトウエア上で設定を施しておくだけで、VPNを利用できるようになりますので」
部長「実際に通信を行う人が、その都度ごとに設定を施す必要はないんだね」
Cさん「現時点では東京本社と北海道支社の間が、専用線で接続されていますよね。しかし専用線は長距離の場合、帯域幅が狭くても利用料金が高いという問題点があります。いっそのこと本社と支社の間は、音声もデータ通信もVPNへ移行するといいのではないでしょうか。このところ増えてきたブロードバンドの回線を利用すれば現在の専用線より帯域幅が広くなって、高速な通信が可能になりますし」
取引先との間でVPNを利用する方法
部長「わが社の本社と支社の間は、それでいいかもしれないよ。しかし取引が多い顧客との間の通話やデータ通信も、第三者に盗聴されるとまずい場合があるよな。ところが取引先の企業が、必ずしもWindows 2000やWindows XPを使っているとは限らないじゃないか。その場合、データ通信でもVPNは利用できないのかい」
Cさん「いいえ、そんなことはありません。データ通信を行う双方がVPNに対応した同じ機種のルーターなどを使っていれば、OSが違っていてもVPNを利用できます。ただし関連会社などでないかぎり、ふたつの会社の間でルーターの機種をそろえるというのは困難な場合が多いかもしれませんが」
スイッチは、ネットワークのコアに位置しています
Bさん「それはデータ通信の場合ですよね。音声電話でVoIPを利用するためのVoIPゲートウェイも、取引先との間で統一するのは困難だろうからなあ。VoIPでは音声の品質が保証されない点も考えあわせると、取引先との通話には今までどおりの公衆回線を利用する方が無難かもしれませんね」
Cさん「部外者に盗聴されると困る商談などを取引先との間で通話する場合は、一般の公衆回線を利用するなどの使い分けを工夫するといいでしょう。もちろん取引先がサーバのOSにWindows 2000かWindows XPを使っていれば、わが社との間のデータ通信でVPNを利用するのは簡単ですけどね」
出先からのデータ通信でもVPNの利用が可能
Cさん「データ通信のVPNには、もうひとつ別の利用方法もあります。東京本社の営業の人たちはノートパソコンを持ち歩き、出先から社内LANへ接続する場合も多いそうですね」
部長「ああ、そのようだな。在庫を確認したり、外出先から上司に報告書を送ってきたりしているらしいよ」
Cさん「その場合は一般の電話回線か携帯電話などを使って、データを送受信するわけですよね。それだとデータが一般の電話回線を流れていく途中で、部外者に盗み見られてしまう可能性があります。しかしVPNを利用すれば、その可能性を防げるんですよ」
部長「データ通信のVPNというのは、ノートパソコンでも利用できるのかい」
Cさん「ええ、ただしノートパソコンのOSにWindows 2000 ProfessionalやWindows XPを利用していることが条件になりますけどね。その場合は、やはりソフトウエアで簡単な設定を施すだけでVPNを利用できます」
部長「音声の通話とデータ通信のそれぞれに関して、VPNを利用できる場合と困難な場合がいろいろ分かれるわけか。しかしVoIPを導入する際には、データ通信でVPNを利用することも併せて検討してみるとよさそうだね」
「IP通信の種類別のセキュリティ確保法」 ●本社と支社間の音声通話
→VPNに対応したVoIPゲートウェイを利用する ●他社との間の音声通話
→双方がVPNに対応したVoIPゲートウェイを利用
→それが不可能なら部外秘の通話は公衆回線を利用 ●本社と支社間のデータ通信
→Windows 2000やWindows XP上でVPNを 設定して利用
→それ以外のOSでは、専用のルーターなどが必要 ●他社との間のデータ通信
→双方のOSがWindows 2000かXPならVPNを 設定して利用
→OSが異なる場合は、ルーターの機種をそろえる ●出先からのデータ通信
→OSがWindows 2000かXPならVPNを設定して利用
●筆者プロフィール 中津川健一(なかつがわ・けんいち)
1964年生まれ。某大手ソフトウエアメーカー在職時代は、ソフトウエアのマニュアル制作を担当するほか、雑誌等にも執筆。4年前に退社し、現在はフリーのテクニカルライターとして、系列メーカーのツール類やWebページなどで活躍中。
(掲載:2001年11月)
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